ホッと空の物語30‐海峡のモグラ-ディックの願い

その夜、彼我の形勢分析をじっくりと行った。最後に、杉村部長が「こちらがわずかかも知れないが強いと思う。明日は押すぞ」と断を下した。

明けて2月21日(土):土曜日。

ディック:昨日小杉とコンタクトを試みたができなかった。したがって結論が出ない。
  しかしロビンスとしてはCo-opを続けたい。ポイントは2つである。
  第一は、TRCと小杉は1チームで参加する。
  第二はともかく50%の持分欲しい。それに技術的な問題の最終判断をどうするか決
     めておきたい。技術者同士で結論が出ない時、ロビンスが決定をしたい。近藤
     さん、KHIのコンセプトについてOpenにしてもらえるか?
近藤:できない。小杉がいるかぎりしない。
ディック:もし小杉がいなければOpenにするのか。
近藤:もちろん。
杉村:ともかく貴方と一つのプロジェクトで同じテーブルに着いたのは歴史的事実であ
   る。紳士的に話しを進めたい。
ディック:ロビンスとして自分で問題に対処するためには全体をみる必要がある。一緒
  にDiscussできるなら共に責任も取る。
杉村:完全な機械を作る為当然Openにしないといけないのはわかっているが小杉が
  いるのに中身の話しはできない。この問題は最初から判っていた話である。理解した上で
同じテーブルに着いているはずである。これ以上言うなら終わりにしたい。

と机を小さく、しかし力強く叩き、「もう終わりである。帰ってくれ」と言い放った。
その場の空気が凍りついた。
奇妙な静寂が数秒続き、彼は小さいがはっきりした声で、応えた。

ディック:済まない。本当に済まない。KHIにジョインします。しかし小杉を排除するまえ
  にコンセプトを話し合ってからにしてもらえないか。
杉村:リークしないならよかろう。
ロビンス:ありがとう。小杉がいなければスムーズだった。しかし居なければ、今日もな
  かった。小杉との契約は破棄することになるかも知れない。つらいことである。今後
  実務上、色々な問題が出るだろう。KHIの満足の行く様に考えたいので、アイデアあ
  れば出してもらいたい。

このように、ロビンスの全面譲歩で三社コンソーシアムへの関門を通過した。こちらのコンセプトの説明には近藤ブックが大いに役に立った。ロビンスのコンセプトは昨年10月14日にノートに書き記し既に知っていたし、折込済みであった。ディックからは「何故T1と同じ構造なのか、知っていたのか」とは聞かれなかったし、むしろ安心した様子であった。充実した検討内容に安心した模様でもあったし、すでに中身を知っていた風でもあった。
そして互いにさほど違和感もなく、大枠の詰めを行い、2月25日に「Memorandum Of Undestanding」(MOU)にサインしてR-K-Fの三者コンソーシアム設立が合意された。この時ロビンスからロビンスブックをもらったが、これはT1~T5までのTMCとの包括契約書で、技術、代価ともに記載されていた。全ての契約がすでに済んでいた。しかし製造を担当するはずの仏企業ソムデラトル社が倒産したのである。ディックの苦渋は如何ばかりであったろう。同時に世紀のプロジェクトへの歴史的使命感には感銘した。
ともかくディックにとってはもう一度、我々は新たにT2,3の受注に全力を挙げることになった。彼に決断を促した杉村部長の胆力は感銘であった。
ここに共同戦線が結成された。


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