ホッと空の物語29‐海峡のモグラ -三つ巴

ロビンスとの交渉は、小杉の問題が暗礁に乗り上げ膠着したままであったが、2月19日に杉村営業部長が来仏して事態が動いた。
1987年2月20日、21日(土)は大きな転換点だった。KHIはFCBに対し「小杉を公式参加させないこと」を確認しその上でロビンスの言い分を聞いた。

ロビンス社長ディック
TBMのコンセプトはTRC(ロビンス)が出し、製造はFCBで行うのはグッドアイデアである。TMCも賛同するだろう。問題はTRCとFCBがそれぞれ日本の競争会社と繋がっている事である。そこで、KHIとFCBの関係はそのままにして、FCBはKHIから技術支援を受け、ロイヤリティを払ったら良い。TRCも必要なら小杉に対してそうする。
FCBは詳細設計と製造を担当し、TRCは基本計画をする。秘密協定はTRCとFCBで結ぶ。TMCの意向はFCB/TRCのグループと契約したいのは明白である。しかしFCBは大企業であるが十分な大きさではないので日本の巨大企業の裏付けが必要である。
私(ディック)の疑問は
1. 小杉とKHIは、それぞれ別々にFinancial ギャランティ(財務保証)ができるか。
2. 小杉とKHIは、TMCに対するギャランティできるか。
3. 小杉とKHIは、FCB/TRCの二社が作る新会社へのギャランティができるか。
要はプロジェクトはTRC/FCB二社で遂行する。日本勢は財務の責任を持てと、言う。

これに対し杉村氏は「その様な話しの前に、TRCとソムデラトル、PHWの契約がソムデラトルの破産によって変化したはずだが、今後新規のコンソができるのか。」と切り返した。ロビンスの重大な問題とは製作相棒のフランス企業の倒産である。
ディックは、「準備している、すでに法的な処置を始めた。30日後にはT1の問題は切り離せる。今はPHWとの2社である。T1はシアトルに移して遂行するつもりである。TMCはT1とその他を分けることを提案して来ている。TMCはT1と同じ条件でT5までを履行させる権利を持っているが、この権利を行使しないと思う。」と、初めてT5までの包括契約を語った。
私は全契約終了のことを知って驚いたが、杉村氏は動じず、「一つのプロジェクトにTRCが2つのコンソに参加できるとは思わない.言葉だけでは信じられない。」とさらに問うと「PHWは財務保証のため、無理やりTMCが参加させたのである。除外できる。TMCに保証のレターを書かせます。信じて欲しい。」と言明した。これは三社コンソへの執着の強さであると感じた。同時に相手の弱点をつく杉村氏の作戦には感心した。

一旦休憩して午後14時から三社協議を再開。

杉村:小杉が本当に必要ならT1で表に出ているはずである。出ていないのは不用と言うことである。したがって小杉をはずさないなら了解できない
ディック:小杉は最初、コンソの表メンバーであった。しかしFinannceと技術がコントロールできないとして離脱した。しかしTMCは小杉が居なければ密閉技術の無い私に発注しなかった。今はKHIの方が小杉より優れた技術を持っている事を理解しているが、TMCはまだそうではない。小杉もKHIも裏で良いのではないか。
杉村:KHIは今までも将来も小杉には負けない。同列に扱わないでもらいたい。よって3社と言っている
ディック:KHIを入れるとロビンスと小杉の関係が壊れてしまう。
竹村:いまさらそんなことを言うなら、話し合っても時間の無駄である。
ディック:TBMについてはFCB、KHIの方が学ぶことが多いはずである。貴方たちは2社でひとつと思っていた。したがって小杉のことを考えると2社もしくは4社である。
杉村:私はすでに譲歩したのである。そちらも譲歩すべきである。(何を譲歩したのかな?)解決しない話なら止める。
ディック:持分を三分の一貰っても許容できない。三社なら50%はもらいたい。小杉の持分を小さくするから4社にできないか
杉村:駄目である。原則は曲げない。

と突っぱねた。 しかし、決定的な決裂を避けるため、今日はここまでとした。

感想として、小杉は案外に保守的というか、守りに徹していると感じた。小口径TBMも率先して開発を受けていれば、KHIはここには居なかったのである。驕ったり、チャンスは逃してはいけないとしみじみ思った。


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