ホッと空の物語78‐コペンハーゲン環状地下鉄

デンマークはグリーンランドを除くとドイツのハンブルグ北方のユトランド半島とその東のフェン島、さらに東のシェラン島(英名:ジーランド)と多数の島からなる王国で面積は九州程度で人口は600万に満たない国である。首都はコペンハーゲンでシェラン島の東端にあり、その向こうのオレスンドという海峡(英名;エ―レ海峡)の対岸はスエーデンのマルメ市である。この国は小さな国であるがトンネル工事の分野では世界的に高名なプロジェクトが多い。
ユトランド半島とフュン島間の海峡をリトルベルトといい、フュン島とシェラン島の間には幅18Kmのストアベルト(英名:グレートベルト)という海峡がある。リトルベルトは1980年代に架橋されており、グレートベルトには鉄道と自動車道の連絡施設の工事は1988年に始められ1998年に完成した。
ストアベルトの真ん中にはスプローエ島があり西側は道路鉄道両用のウエストブリッジ全長 6611 m、があり、東側は鉄道用は全長 8024 m の鉄道用海底トンネル、道路用はイーストブリッジ全長 6790 mとなっている。
トンネル工事にはTBMが使用されたが、非常な難工事であった。スクリュウ排土方式が採用されたが摩耗、破損など機械的な面でトラブルが続出した。KHIにも協力要請があったが、英仏海峡で手一杯だったので応えられなかった。他の日本メーカーが協力して完工にこぎつけたと聞いている。
エ―レ海峡(オレスンド)側は1995年に建設を始め、2000年に約4Kmのトンネルと7800mの橋梁を含む全長16キロメートルのリンクが開通しユトランド半島とシェラン島、スカンジナビアは陸路で繋がった。この工事は対応調査に出かけたが調査だけで終わった。

コペンハーゲンには英仏海峡時代にシアトルへの経由地として1987年に一泊したことがある。その後1993年に国際トンネル学会(ITA)の総会で英仏海峡プロジェクトの講演をする機会があった。その時にストアベルトの工事現場を訪問した。その後はアトラスコプコ社との提携の関係でストックホルムへ何度か行く機会があったがデンマークには機会が無かった。しかしSELIと協業を始めてから、2011年以降コペンハーゲン市の環状地下鉄の件で5回ほど訪問する機会を得た。

ITAコペンハーゲン講演会とグレートベルト工事見学

ITA国際トンネル協会と言う会議体がある。各国にはその支部があり、日本の場合はJTA、韓国はKTAという具合である。本部は英国でその機関誌がT&T誌で、日本の場合は「トンネルと地下」と言う月刊誌になっている。2年毎に世界各地で講演会が開催される。日本は開催にさほど熱心ではないが各国はオリンピックの招致合戦なみに熾烈な競争をする。1993年はデンマークのコペンハーゲンで開催された。ドーバープロジェクトは大きなトピックで関係各社が、この記録を発表することになり、川重は三菱重工と一緒にフランス側の掘削について講演をすることになった。
これまでに国内での講演はしたことはあるが、由緒ある国際学会は始めてである。しかも審査が厳しく、内容だけでなく英語力、文章力も問われる。本番に向けて、レジュメ(目次)、アブストラクト(要約)、本文提出と順次なっているが実際どうして良いか分からない。和文も出来ていないので、困っていると三菱の西岳氏がわざわざ当方に出向いてくれ「出来ていると思いますが、早く終ったので、川重さんの分と合うように見てもらいたくて持って参りました」と丁寧に、当方の立場を立てながら和文、英文の原稿を持ってきてくれた。これでようやく前進することが出来て原稿の提出を終えた。
発表は二人で分担して行ったが、実際原稿を読むのが精一杯で、その後の質問の時間は私宛とは分かったが、言葉が良く聞き取れないのでキョトンとしていると、西岳氏がそれとなく訳してくれ面目を保てた。その後退職まで職務を離れてお付き合いさせてもらった。
その後のサイト見学では建設中のストアベルトトンネルの現場に行った。これはユトランド半島とコペンハーゲンのあるジーランド間を結ぶものである。なかなか難しくてうまくいかないと言っていた。同時に橋の建設も進めていた。この橋を見に行ったが、小さいタグボートである。船は酔うので嫌であるが仕方ない。港を離れ北海の荒波に揉まれ出すと生きた心地がしなかった。
この国際トンネル学会総会には各国から多数の関係者が参加していて、同じアジア系と言うことも合ってタイ国の人と知り合いになった。今後地下鉄などのインフラ整備を急ぐということである。彼は英語が流暢であり、講演の話しになって、「私は英語が不得意である、特にヒアリングが悪いので不便である。あなたはうらやましい」と言うと「とんでもない。日本人は英語が出来ないことを誇りに思って欲しい。英語が出来なくても世界に通用するし、母国語で勉強ができるではないですか。アジアで英語が無くても生きていける唯一の国である」と言う。いわれてみればそのとおりである。タイの人は勉強するためにはまず、英語を学ばないと出来ない。しかも、母国語に同じ概念がない場合は、とても理解に苦労するらしい。日本人は全て日本語にできるではないかと言うことである。そのとおりで、これは明治の先人の努力の賜物である。特に西周(にし あまね)と言う哲学者の恩恵が大きい。今では、中国や韓国も英語と日本語を見比べて母国語に変換していると言うことである。いずれにしてもこの後、タイ バンコックで地下鉄用シールドを複数台納入する事になった。

環状地下鉄 
コペンハーゲンの地下鉄は既に二本の路線がある。今回の環状地下鉄は市部をぐるっと回る線で、環状部長さ14.2Kmとそのアクセス800mからなる。TBMは4台使用された。
1,2号機はイタリア製、イタリア組立で3,4号機はSELI社の経営不振の影響でデンマークで組み立てが行われた。全機とも駆動部、SCなどの主要部は日本製である。

トンネルは外回り、内周りのニ線で四つの工区に分けられている。1,2号機ペア( NoraとTria)の第一期工事は5200m、第二期工事は4000mである。3,4号機ペア( MinervaとEva)は第一期工事が1360m、第二期工事が5000mである。どちらのペアも一期工事終了後は地上基地で解体整備して二期工事の縦坑に移動するという工程である。トンネル線形は190mR水平、625mR上下で傾斜は±6%である。
TBMはローラーカッタ(DRC)を装備しており、胴体は二か所中折れ機構を持つ。前部中折れはActive方式である。セグメント内径は4900mmφで長さは1.4mである。掘削径は5780mmφとなっている。
地質はおもにライムストーンで、ところどころに亀裂帯があると予想されていた。施工実績では3,4号機の一期工事で50m長さにわたってBig boulderがでて苦労した。1,2号機の一期工事では塩素ガス地帯に遭遇した。3,4号機の二期工事では粘土分の少ない崩壊し易い砂礫層に2km長さ近く遭遇し掘削がうまくいかなかった。また1,2号機の一期工事ではFrederisksbergとFrederisksberg Alle駅間の施工ではカッタヘッドの地山による拘束が多発し減速機のトルクリミターが何度も作動した。不慣れであったので復帰手順に問題があってリミターを破損したが、日本側の支援もあってこのトラブルを乗り切った。復帰作動が容易な機械式トルクリミターの採用は正解であった。この修理に当たっては日本メーカー、英国製造者とも現地を視察し、復旧に努力し施工者・施主からも感謝された。
 2014年7月に掘削工事を開始して、2017年2月に終了している。
記録は最大日進記録=34m/日、最大週進記録=174m/週、最大月進記録=734m/月である。作業は3シフト/日、6日/週ワーク、日曜はメンテナンス予備である。
同時に4台のTBMを稼働させているので資機材、人員配置などで苦労したらしく、進捗は稼働TBMを選択して集中的に作業をおこなっていた模様である。月間を通して安定的に操業された月の稼働率は40~43%であった。掘削速度は35分/リング、エレクション時間は40分/リングであった。1,2号機が約9400mの掘削でカッタヘッド回転数は約73万回転、4800時間である。かなりな長距離施工の記録である。
現場には時折訪問したが、施工者はイタリア業者らしく、食にはかなりこだわっている。訪問した時は夕食にはイタリアンレストランに招待してもらった。本場イタリアと同じである。現場にはキャンティーンがあって三食食べられる。昼食はここで頂いたがなかなかのものである。デンマークの食事事情は悪くは無いが、感動ものではないし非常に高価である。街でバーガーセットを頼むと1500円はする。日本食もあるが、まがいのもので感心できるものではない。ただホテルの朝食は種類も多く、まずまずである。
基本的には農業酪農国であり、チーズやハムはとても美味しい。

1,2号機の二期工事のスタート地点(3,4号機二期工事の終点)であるOstel Sogade駅の近くにあの有名な人魚姫(マーメイド)の像がある。海岸の少し海に入ったところに鎮座している。運が良ければ引き潮時に傍で写真が撮れる。ただ姫の像は高い所にあるのでどのような顔かよくわからない。しかし宿泊したホテルのロビーにレプリカがあった。それによると美人とはお世辞にも言えないが愛嬌のある顔で、こういうのがデンマーク人の好みかと思った。
市庁舎の近くにはチボリ公園がある。案外小さいもので冬に行ったせいか特別な感激は無かった。市庁舎の横を通ってStroget(ストロイエ)通りは賑やかな国際通りである。ここにおもちゃのLEGOの本店がある。この通りはアジア系、中東系の飲食店が多い。LEGOの店を過ぎてストロイエ通りを行くと焼き物で有名なRoyal Copenhagen の本店がある。Years Plateを頼むと送付してもらえる。

この案件では4台の土圧式シールドのバルクヘッド、メインベアリングと駆動装置、スクリュウコンベア、中折れシールなどを供給した。通常の受注工事案件と異なり性能責任が軽いという安堵感があった。また欧州案件に参加しているという高揚感も設計組織全体にあった。それ以上に、欧州仕様について様々な情報を得たのは大きかった。またこの案件のコンサルタントグループは英国人で、この中の一人、Simon Taylor氏はこの後シンガポールの方に移動すると聞いた。CTRLのゴードン インス氏もそうであったが、やはり欧州ではこの業界では英国がオピニオンリーダーであるということを実感した。

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