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zoom RSS ホッと空の物語64‐TBMオリンピック ロンドンCTRL‐2

<<   作成日時 : 2019/02/18 08:36   >>

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CTRLプロジェクトはドーバー以後10年振りの大型案件だった。欧州ではシールド工法が見直され活発に採用されていた。我々はここまでに英国に実績を築いていたので地歩をより固める事が出来る、部門の人材も若返っているので海外活動を継承する事も出来ると期待した。しかし、英国内も足元も大きな環境変化が始まっていて、加えて技術面でも様々なトラブルが起こり製作段階で思わぬ誤算が多発した。結果、事業面で大きな損失を出し以後の戦略に悪影響を与えた。それでも施工成績は金メダルに値し、欧州での業務経験は若い世代にとって有意だった。

製作時の混乱
2001年の受注のすぐ後に、土木機械部は所属していた産機プラント(事)が別会社になる解体的改編となったので、大型構造物ビジネスセンター(旧鉄構)に移動して場所も播磨工場に移った。土木部長も私に交替した。しかし播磨工場は残念ながら主力製品を閉鎖して生産能力は大幅にダウンし、かつての輝きは失われていた。そして4月には工務部門と工事部門は製品別組織(総括部制)から職務別組織体系に変更が行われた。海外大型プロジェクト開始直前での工程・コスト管理、調達という要部門がPM権限外へ離脱することは大きなリスクと不安を感じた。しかし母体事業部の無くなった今、新しい土俵で頑張るしかない。実行体制は新旧関係者が協議を重ねて納期、輸送コストや彼我の製造能力などを勘案して次の体制となった。

・TBM:設計=日本、製作=英国マーカムに発注し一部は調達作業も移管
・後続設備:基本設計=日本、
詳細設計・製造・調達=英国Bennet社に発注、(台車枠=伊OCML社)
・全体組み立て=クオーターホール社(QH)に発注

全体組立もマーカムとする事を期待したが、コストや二台分のスペースに無理があったのでスコットランドに近いミドルスブラーにある工場を借りて作業契約はQH社と結ばれた。油圧配管、電機配線工事を一括で請け負うというのも利点と思われた。実作業はQHの下請け会社が行うことになっていた。
しかし、ここから大変な苦難が始まることになった。最終的には製造コストは150%となり、納期も70日程遅延してしまった。
原因は内外にあった。内的要因は製作図の不備、間違いや途中で仕様変更をしたことがある。外的要因としてはマーカム親会社の信用不安が起こり製造品の所有権問題が生じて工程が大きく乱れたことがある。さらにHSE(イギリスの安全関係規格)への知識不足もあって手直しが多数出た。そしてQHの管理能力は極めて低く作業員もスキル不足であった。しかし何よりも英国業者への予算工程等の管理が十分に出来なかった事である。しかもこれらの危険予兆や問題情報が社内で迅速に伝わらず、対応が後手に回ったことである。
問題がいよいよ顕在化して製品担当部門として土木BUが前面に出ざるを得なくなった時にはQH社との関係は破たんしていて、挽回の望みは薄く、さらなる損失が危惧された。客先、施主も心配して源契約の是非、支払い延期の問題になり始め一刻の猶予も無かった。そこで顧問弁護士とも相談してQHとの契約を破棄した。工場はロックアウトをしてQHを締め出し警備会社の厳重な警戒下で、元の下請けを使って作業を行った。夜間は大型シェパード犬を二頭連れて巡回警備を行った。
一号機は最低限の完成度で最小の試運転項目で工場立ち会い検査を行って現地に搬出した。契約破棄時点では配線、配管作業は途中であったので国内協力企業から人材を派遣し、具体的作業を直接指導して(労働は出来ない)残工事を消化した。派遣人員には大変な努力をしていただいた。
二号機は一日も早くミドルスブラーの工場から撤収する事が、コストや納期で得策と判断され、何より保安上の対策として未完成のまま現地に送らざるを得なかった。これは現地組立工事において膨大な追加作業を産み、さらにコスト悪化を招いた。
後続設備はTBM以上に機器の調達、設置、配管、配線、安全設備等、煩雑なものであるが、一任した英国企業がよく対応し、派遣した技術者の奮闘もあってQHに搬入されるまでの工程は大きな問題とならなかった。
こうして、ようやく2002年の9月と11月に掘削開始をすることになった。1号機が2カ月、2号機が契約から4カ月遅れとなった。

施工成績 
最終的に各工区の機械形式は様々であった。当初の要求仕様通りは250工区だけで、240工区は土圧式のみ、220工区はDual式であった。320工区はテムズ川横断であり泥水式である。
運転開始後は、英国人作業員にとっては日本のTBMはこれまで使い慣れた欧州機とは設計思想が異なるので操作に手間取ったが(特にエレクタ―の機構的差異)、慣れるに従って進行速度は上がっていった。途中で運転不手際からクラッチの焼損を起こしたり、スクリュウコンベアの取付部の疲労破断などのトラブルも有ったが、全体的には好成績を収めた。
実運転ではオープンモードを使うことはどの工区も無かった。施工実績一覧表を見ると我々は他社より月進平均は30%以上の好成績である。注目すべきは2台のTBMの成績差が少ないことである。これは設計品質(対地質適応能力)の高さを表している。他社は二台間で60〜80%の性能差が出ている。先行機は性能が十分発揮できず、坑内で改造を行ったため、ロスタイムが大きかったと聞いている。例えばC250のW社は開口率向上の改造工事を行った。C220とC240のカッタヘッドは土圧式の常識的な大きな開口率だったが、C250はあまりに開口率が小さかった。彼らは硬岩TBM育ちであるのでローラーカッターの装備を中心に考えていたようである。もちろん我々も同じ配慮はしていたが開口率優先とした。
地表面の沈下は、数字は分らないがC220工区が最も小さかったと聞いている。

英国での生活  
製作中、現地組立中には多数の仲間が英国に駐在したので、私もしばしば進捗管理や客先との定例会議のため毎月のように訪英した。そんなことでロンドン滞在日数は162日となりフランスのパリやカレー市、シンガポールに次いで4番目である。
ロンドンでは主に地下鉄セントラルラインのランカスターゲート駅近くの元YMCAだったホテルに宿泊した。会社のロンドン事務所はこの線のリバプールストリートにあり、さらに東に行くとマイルエンドそしてストラッドフォード駅である。現場はこの駅の裏側になり駅構内には工事関係者の専用ゲートが設けられた。
会社の事務所の建物の一角に高名な私的レストランがあるらしくて、ある時チャールズ皇太子が昼食に現れた。多くのロンドン娘と一緒に近くまで近づく事が出来た。 
ロンドンでは食事は困らない。夜は近くの中華、インド料理、時折リージェントストリートの日本食レストランに出かけた。ここにある韓国料理もおいしい。またソーホー地区の中華は安く豪華で美味である。
ミドルスブラーでは全員食事には苦労した。昼は車で売りに来るハンバーグで夜は脂っけの多い中華のテイクアウトである。朝食はまだましで分厚いハムと卵料理であった。しかし毎日ほぼ同じものでうんざりした。
ストラッドフォードの工事現場にはキャンティーンが設けられた。メニューはイタリアンが多くラザニア、パスタは美味であった。給仕の女性はウクライナやロシアの若い女性が多く英国でもひときわ目立つ色の白さであった。
英国料理と言うのはフイッシュ&チップスやローストビーフの他はあまり知られていない。私も美味しかったという記憶は数度である。ロンドン⇔シェフィールドの鉄道料金は特急片道で90ポンド、往復を買うと95ポンドという変則な料金体系である。ある時必要があってロンドン ヒースロー空港へタクシーで直行することになった。途中の村で昼食をとった。大したメニューはなかったが、数種類の煮豆のマヨネーズあえサラダとスモークドポークはかなり美味だった。総じて一般のレストランよりメンバー制のレストランがおいしい。メンバー制ゴルフ場などである。BTS講演後のパーティ食も特別に準備したようで絶品であった。ある時、雇用弁護士に彼らの昼食に招いてもらったがこれも華麗で美味であった。古城のレストランもかなり美味しいし、そこでの午後のテ―タイムは美味しいクッキーがたくさんついて豪華である。酒はスコッチが有名であるがイングランド人はビール党が多くギネスビールが知られている。
CTRLに掛けた思い
本件は経営的には大変な損失を出し、また個人的痛手も被ったが、無益ではなかったと思っている。この十年内に、当社が技術供与していた仏・FCB、英・マーカムなどが業界から撤退し、日本メーカもGCも欧州に対して消極的になってしまった。このような状況の中で、あえて欧州案件への取り組みを強めたわけである。世界で足場を固める好機であるとも考えた。やはり欧州は世界の中心であり、シールド・TBM市場は益々大きくなっており、日本とは異なる斬新な技術が開発されていた。これらの技術動向を掴むだけでなく、彼らの“新天地を切り開く思考の過程”を学んでいかねばならない。
いつの時代もトップグループへの窓を持ち、最高峰のコンペティションに参加して、切磋琢磨していく事は事業を継続していく上で肝要である。この後もその模索は続けていく決心は変わらなかった。打だし自らの足元が揺らいでいるときは外には出てはいけない。

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内 容 ニックネーム/日時
そうだったんだモモノ
アキラ
2019/03/21 21:40

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