ホッと空の物語41‐海峡のモグラ-パリの生活‐1

調達活動でパリの外に出張する以外は、オーレの事務所で仕事をしていた。宿は地下鉄ノートルダム ド ノレット駅の近くのホテルブリタニーにした。このホテルはロビンスがパリの定宿にしていたところで、多い時は同僚8人が宿泊した。因みにノートルとは「我々の」と言う意味でダームは婦人である。つまり我々の婦人=マリア様である。
オーレ事務所はホテルからワンブロック先である。途中に中華料理の「民衆」や、イタリヤレストランがあり夕食に良く用いた。毎日利用しているとおもわぬサービスをしてくれることもある。中華では時々日本式の鍋料理を作ってもらった。時には日本食を求めて、オペラ座近くまで出かける。さらにパリ1区にまで行くとモン タボール通りのチサンホテル内に美味しくて安い日本食があった。従業員も日本人であったが、そのうち仏人になっていったのは残念であった。JAL日航パリの鉄板焼も高級で、調理のパフォーマンスもすばらしく、ディックや大切な客とは時々利用した。サン・ラザール駅の近くにガルニエと言う有名な海鮮レストランがある。ここのデザートのクラムキャラメル(プリン)は大好きである。ただ店は高級だが私はコストパフォーマンスが良いとは思っていない。
昼食はオーレ事務所前のレストランを良く利用した。ここのウエイターとは、懇意になり何かと世話を焼いてくれた。彼等は給金よりチップが大切なので常連客は大事にする。頻繁にオーレやマダムオーレが昼食をご馳走してくれ、メニューを色々変えて勧めてくれるので、ちょっとしたフランス料理通になった。
オーレ事務所の秘書にマダムコンブランと言う中年の婦人がいた。大柄な人で、主人はいるが入院中で、当人は独身を満喫するかのように、妖艶な化粧をして出勤してくる。出入りの業者は仕事の話のはずだが、彼女が目的という人も多かった。私はせっかくフランスに居るのだからと、シアトルで米人用の仏語の本を買って、彼女に習うことにした。「ウイ、ムッシュウー、ジュブザンプリ(喜んで)」とにっこり笑って了承してもらったので、しばらく教えてもらった。
土曜、日曜はシャンゼリーゼに行って、カフェでビールを飲みながら通行人を眺めているだけで楽しい。この通りの正式な名称はAvenue de Champs Elyseesと書く。つまりエリゼーキャンプと言う意味で、古代ローマ軍のキャンプである。コンコルド広場の近くでSaint Honore(サントノーレ)通りに面して大統領府であるエリゼー宮がある。Avenueは大通りに用いRueは小さな通りに用いる。
FCBパリ事務所もこの近くである。FCBとの打ち合わせがある日の昼食は良く韓国料理に行った。大統領府のエリゼー宮の前を通って行くのであるが、走ってはいけないと言われていた。仲間の一人が冗談で走ると、小銃を持った護衛にあわや撃たれそうになり、とりなすのに往生した。フランス警察には冗談は通じないから注意が必要である。
コンコルド広場の先にルーブル美術館がある。今後の観光客を見込んで、改装を行い、ガラス張りのピラミッドを作っていた。パリジャンは何ということと憤慨していたが、一方ではエッフェル塔のようにそのうち馴染んで、良い観光資源になるとも言っていた。
パリ駐在はかなり長期であり、楽しい事も多かった。その一つはホテルのオーナーが滞在日本人を全員バス旅行に連れて行ってくれたことである。12月の始めであった。ローヌ地方のシャンポール城へ行き、近くの百姓家と共に昼食を食べた。フランスの百姓はとても裕福で、さすが先進農業国である。食料はほとんど自給自足でワイン、肉類も自給である。畑の中のワイン蔵に連れて行ってもらい、自家製のハムとソーセージを頂いたが極めて美味であった。添加物がゼロだとこんなに味が異なるのだとは食べてみて初めて気がつく。ワインは何種類か開けてくれた。貴重な30年物を頂いた時は、これは同じワインというものではないと思った。このホテルオーナー氏は私を良く食事にも連れて行ってくれた。彼が好きだったのはアラビヤ料理のクスクス(Couscous)である。これは小麦の粗挽粉に水を含ませ、調理後の大きさが1mm大の小さな粒になるように丸めてそぼろ状に調整したものである。その粒を主食とし、肉やスープ類と共に食べる。肉は主に羊が多いが、なかなか美味しい料理で、私もファンになった。しかしアルジェなどに長期滞在した人は、二度と食べたくないと言う。確かにフランスで食べるから美味いのかも知れない。シアトルでもメキシコ料理をご馳走になった時、メキシコに行った時は、食べないようにと米国人に言われたが、同じ事なのかも知れない。ホテルオーナー氏には、サッカーも見に連れて行ってもらった。日本では当時あまり流行っていなかったし、興味もなかったが欧州、南米では盛んと聞いていた通り、競技場での熱狂ぶりはすごかった。
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