ホッと空の物語40‐海峡のモグラ-欧州購入紀行

課題は調達品(購入品)である。カッタヘッド駆動装置はロビンスより購入、ジャッキ類は日本製としたが、マンロック、エレクター真空装置、セグメント受取り吊り上装置、掘削延長に伴う資機材受取り装置、大規模受電設備、大容量油圧装置など日本製が無いもの、有っても規格の問題、予備品の問題、契約上の製作比率などからフランスを中心とした欧州で購入する必要があった。すべて初体験の業務であった。
8月23日に改めてT1の勉強と調達品仕様の確認のためシアトルに出かけた。ロビンスはT1製作拠点を米国ポートランドに移していた。各機器の仕様、メーカー、発注上の注意点などを仔細に打ち合わせした。
9月4日に帰国後、必要な要求仕様書を作成し調達部を通じて発注作業を開始した。
9月21日から翌1988年3月4日まで調達部の技術応援で海外駐在となった。
途中12月8日から1月20日は帰国したので、合計123日でパリ滞在は111日である。
初めて接触する企業が大部分であったが、各社ともに世紀の事業に参加したいと言う、熱意にあふれていて、真摯に対応してくれた。
10月5、6日はマンロックの件でマルセイユ、ツーロンへ。
マルセイユはフランス第二の都市で地中海に面し、Provence-Alpes-Cote dAzurec地方の首府である。近くにニース、モナコがある。アフリカへの渡航玄関である活気のある街であるが、危険な通りもあるので、注意が必要と教えられた。
ツーロンはマルセイユの隣町で海軍基地があり、潜水艦技術を応用してマンロックメーカーがある。
10月28,29日はメインベアリングの件でパリ南方のアバロン(Avallon)へ。アバロンはワインで有名なブルゴーニュ地方の首府Dijonのすこし北にある。高級白ワインのシャブリは近くである。超高価なロマネ・コンティもこの地方の赤ワインである。現地で飲むワインは格別美味い。赤白しっかりとご馳走になった。料理は変わったものを食べようと、兎、鳩、蛙などを頼んだ。こういうことがあると、つらい仕事も苦にならない。
11月6から9日はT1の調査でシアトルへ。再びポートランドに行ったが、この時の主たる目的は制御関係、欧州の規格、安全対策の調査である。そしてもう一つの大テーマは予備品の管理についてであった。
12月7日は測量システムの件でロンドンへ。測量システムはレーザー光線を使って現在位置と計画線との位置の差異情報に加えて、将来予測も行なう先進の技術であった。日本で同様の装置が出てきたのは、20年以上後であった。ただし、現実にはレーザー光線も坑内の温度差で屈折するので、最後は人間が運転休日に従来の三角測量器で修正確認を行う。測量起点は英仏両側に設けられた。
打合せ後、そのまま帰国した。

帰国後、手つかずになっていた電気制御設計を行った。制御の詳細設計は電装部が行うが、コンセプトは機械設計がインプットしなければならない。装置数がこれまでになく膨大で整理がうまくつかない。ロビンスの設計責任者デイブ.キャスが使用していた「装置の相関図」を応用して、大きなブロックグループ間の制御相関の解析から始め、次第に細部のブロックの制御に入っていった。こうすると絡んだ紐が解けるように分かりやすくなる。
終了後、明けて1988年の1月21日に再度調達支援のため渡仏した。

2月25日はエレクターのセグメント吊り上げ装置の件でオランダ、アムステルダムのナグロン社へ行った。名誉あるドーバー海峡のTBMに使用してもらいたいと真剣であった。
この装置は真空を利用して一個8トンの鉄筋コンクリート製セグメントを瞬時に吊り上げる能力を持つ、世界で初めて採用する最先端技術であった。安全性、トラブル対応性も考慮されたシステムであった。これによって、セグメント組み立て時間が大幅に短縮される。セグメントは6個で1リングの1.6m長さである。16km掘削では1万リングとなり6万個のピースを扱うので、高速施工には欠かせない装置であった。採用を決意した人の勇気と先見性には感心する。
この後、この様式は欧州では一般化していく。ただ日本では地震対応のためにセグメント内の鋼材が多くて重いので、吸着安全率が十分でないとして普及しなかった。
この頃にはサンガットの現場建設も急ピッチで進んでいた。

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